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わらうあくま

笑う悪魔

野村 胡堂

「ロック」筑波書林、1948(昭和23)年12月~1949(昭和24)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,687 字 · 55 页

青空文庫

美保子は語る

花房一郎は血の付いた双刃の剣を見せます。

「食堂の前でした、小雪の降り始めた頃で、その剣が芝生に突っ立って居たんです」

「突っ立って――柄を上にして?」

「え、真っ直ぐに切ッ先が二三寸大地に入って」

「夜の庭で、よくそんな物が見付かったね」

花房一郎の疑いは、すべての人の疑いです。あの騒の真っ最中、小雪の降って来た庭で、大地に突っ立った刃物を見付けるのは尋常でありません。

「二階――閉め切った二階から、お嬢さんがさらわれたと聴いて、庭へ出て二階を見る気になったんです、犯人はお嬢様を抱いて其処から降りられるかどうか」

「フーム、君は妙な事に気が廻るね」

「僕は探偵小説が好きで――何んか起ったら、きっと、自分で探偵しようと思って居たんです」

少年高山昇は、花房一郎に褒められて、すっかり有頂天になって居りました。

美保子は語る

その夜の客三十幾人は、令嬢奈々子の誘拐される前に大部分は帰り、残る人達は傷いた妹美保子の看護のため踏留った、潮田春樹を除いて、全部帰してしまいました。

同時に、何処で嗅ぎつけたか、新聞記者の群が二三十人どっと押し寄せて、庭から玄関から、家の中まで――いや心痛に打ちひしがれた主人熊谷三郎兵衛や、夫人の由紀子までもカメラに収めるのです。