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わらうあくま

笑う悪魔

野村 胡堂

「ロック」筑波書林、1948(昭和23)年12月~1949(昭和24)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,687 字 · 55 页

青空文庫

「これは大変だ、花房さん、どんな事をしても取返して下さい、あれを失っては国の大損害だ、無事に取戻せたら、私は百万円位の賞金を出しましょう」

熊谷三郎兵衛は、金持らしく、此処でも物事を金で解決しようとするのです。

「おや、金庫の奥に何んか貼ってありますね」

花房一郎は警官の持って居る懐中電灯を借りて、引出しを抜いたあとの金庫の奥を照しました。と其処には一枚のタイプライター用紙に、万年筆の達筆で書いた紙が一枚、

これは天下の至宝だ、貪婪なる一個人の私すべき物では無い、此土蔵中の美術骨董品を挙げて博物館に寄贈し、学者研究者の利用に任せる手続を取ったならば、予が持去った品は全部返すだろう。一ヶ月を経てもその決心が付かなければ、預った美術骨董品は、外国に持出して、世界の文化の向上に資する外は無い、右誓言す。法雲寺五郎

読み了ると熊谷三郎兵衛、

「残酷だ、――そんな馬鹿なことは出来るものじゃ無い、この宝庫の中の品は、この熊谷三郎兵衛の財産の半分だ、畜生ッ、どうしてくれよう」

三郎兵衛は忿怒と失望にかり立てられて、醜い顔を紫色に上気させ、地団駄を踏んで罵りわめくのです。