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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

佐山 お前は良い女だ。(互いが互いの反射作用のようにいい合っている間に、言葉の意味は全く喰い合わなくなって、それぞれ自身の幻想の中に落ちている)

佐山 ……お前の好きなように、しな。お前が、どんなことをしたって、俺あ、お前を――お前たちみんなを、愛しているよ。(カスんで、よく見えない目で村子を見ている)

村子 ヒイ……(低い、かすれた泣声のような声を出して、膝をすこし動かして身じろぎをする。……その、はだかの膝へ、佐山が衰えきった上半身を、枯木がたおれるように、パタリと伏せる。その顔がヒタと女の膝に押し当てられている。……やがて、そのままで、佐山のガタガタとふるえる両腕が、両がわに伸びて、村子の腰をしっかりと抱きしめる。二人は動かなくなる。抱きしめられてまっすぐに坐ったまま、村子の両眼が次第にスガメになって、顔全体がオルガスムの頂点におけるように、極端に醜悪に、同時に極端に美しくなって来る。……二人のすぐわきで、無心にサツのかんじょうをしていた花岡は、しばらく前から指を動かすのをやめて、ただ、手に持ったサツのたばを、自分に全く意味のわからないものを持たされたように、非常に不思議そうにマジリマジリと見ている。