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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

花岡 いやさ、俺のいうのは――

村子 カマキリがそんなにうらやましけりゃ、カマキリにしてやろうか? すると、後であたいが、あんたを食い殺してしまってよ? いいか? こら! (からだを弓のようにそらして、花岡の首に巻きつけた左腕に右手を添えて、しめにかかる)

花岡 苦しいよ――

村子 カマキリだあ! (しめる。しめられながら、花岡は両手をダラリとさせている。これはこの二人の間の習慣的なシバイであるらしい。同時にそれはシバイではない)

花岡 おい、おい……く、く、くるし――(手をバタバタさせる)

村子 やい! (しめる)

花岡 も、も、もう――(不意にシバイをやめる。目を光らせて、耳をすましている)

村子 ……(これも、それに気がついて、しめるのをやめる)どうしたの?

花岡 なんか、声がした。(入口の方をうかがっている)……

村子 ……うそ!

花岡 いや(目は入口の方を鋭くうかがいながら、右手をズボンの尻のポケットにやって、そこに入れてあるものをたしかめてから、歩き出そうとして、まだ持っていた左手の、火のついたシガレットを村子に渡す)ジットしているんだ。(入口の方へスタスタと歩き去る)