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たいない
胎内
三好 十郎
「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页
その時々の時勢次第で、同じことでも善いといわれたり悪いといわれたりするきりで、ホントは強い弱いがあるきりだと思うの。そうじゃなくって?
花岡 ハッハハ、すこし酔ったな君あ。
村子 いいじゃないの。そんで、木戸よりゃ、あんたの方が、まあ強かったわけ。だから――
花岡 しかしなあ、強い者にゃ強い者の味があり、弱い者にゃ弱い者の味がある。木戸を相手にして君が味わった味が、おれのよりゃ弱かったことは弱かったろうが、しかし深かったかも知れん。男と女の仲なんてもなあ、鉄の棒と鉄の棒をかち合わせるのとは、ちがわあ。牛を見ているよりゃ、死にそうになったカマキリのメスオスを見てる方が、場合によってコーフンすることだってあるしなあ。木戸が弱虫であればあるだけさ、ふふ、なんじゃないか、その……
村子 スケベエ! すぐそうだ、あんたは! よくばってんの。
花岡 だからよ――
村子 だって、あんたが、あの人になれやしないじゃないの。花岡金吾は花岡金吾で、木戸秀男は木戸秀男、牛は牛で、カマキリはカマキリよ。牛がカマキリになりたくって、そいでいて同時に牛でもありたいのね。ヤキモチというもんです、それは。