轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
わかきひのせっつのかみ
若き日の摂津守
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1958(昭和33)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,437 字 · 47 页
光辰はそっちへ歩いていった。
雑木林の端が、切崩された崖になっており、その下の裸な赭土の空地で、一人の老人が土を掘っていた。うたっているのはその老人で、すぐうしろに汚ならしい小屋の集落があり、その向うに大沼の広い水面が眺められた。いつか見た小屋だ、と光辰は思った。そうだ、鴨猟にいったときだ。瑠璃光寺から出てまもなく、道の脇にその小屋のあるのを認め、あれはなんだ、と民部に訊いたものだ。
「休みたいな」と光辰は呟いた、「喉も渇いたし、少し休みたい、休んでゆこう」
彼は雑木林の中を戻り、およその見当をつけて、そっちへおりていった。
まもなく、光辰はその小屋の一つで、老婆と話しながら茶を啜っていた。小屋の中は暗く、板張の床へ蓆を敷いただけで、一と間きりの鼻のつかえそうな狭い部屋の隅に、どれがなにとも区別のつかないがらくたがつくねてあり、物の饐えるような匂いがいちめんにこもっていた。
「お茶はございません」と初めに老婆が云った、「お茶などはとてもわたしどもの手にははいりません、桑茶でよろしゅうございますか」
光辰が飲んでいるのはその桑茶であった。それは桑の葉を陰干しにしたものだそうで、中風除けにもなるということだったが、ひなた臭くておかしな味のする、なんとも妙な飲み物であった。