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わかとのじょなんき

若殿女難記

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館 、1948(昭和23)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,611 字 · 45 页

青空文庫

少し違うどころか、それはむしろ自分たち一味の罪条に近い、いや自分たちの罪そのものになってきた。どうしたことだろう、なんの間違いだろう、これは中止だ、そう狼狽しだしたときはもう遅かった。

「右八箇条の罪に依って申渡す」若殿はいちだん声を張上げて読んだ。「――側用人松田久弥、年寄役増井琴太夫、勘定奉行灰山主税、以上家禄召放しのうえ国払い」

「恐れながら」松田久弥が仰天して声をあげた。「こは思いがけなき仰せ、さような儀は私いっこうに」

「まったく以て覚えのない」灰山も震えながら云った。「これはなにかの間違いでござる」

「中老角田精一郎、追放」若殿は耳もかけず続けた、「大目付小林三之丞、永蟄居、中老瀬沼六郎兵衛、閉門、小姓組頭五十塚紋太夫切腹、額田采女、原野九郎兵衛……」

いやどうも、ずらずら奸臣一味がきれいに名を挙げられてしまった。――正にあっといった感じで、茫然と我を失った一味の者を若殿はしずかに見下ろしながら、

「宙野、その者を曳き出せ」と云った。

声に応じて宙野と金吾とが、お広縁へ一人の若者を曳きだした。若殿はその男を見ろと指さした。

「紋太夫あれを見ろ、伝吉だ」