轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふとん

蒲団

田山 花袋

「新小説」春陽堂書店、1909(明治40)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,870 字 · 90 页

青空文庫

一時間後にはわざわざ迎いに遣った田中がこの室に来ていた。芳子もその傍に庇髪を俛れて談話を聞いていた。父親の眼に映じた田中は元より気に入った人物ではなかった。その白縞の袴を着け、紺がすりの羽織を着た書生姿は、軽蔑の念と憎悪の念とをその胸に漲らしめた。その所有物を奪った憎むべき男という感は、曽つて時雄がその下宿でこの男を見た時の感と甚だよく似ていた。

田中は袴の襞を正して、しゃんと坐ったまま、多く二尺先位の畳をのみ見ていた。服従という態度よりも反抗という態度が歴々としていた。どうも少し固くなり過ぎて、芳子を自分の自由にする或る権利を持っているという風に見えていた。

談話は真面目にかつ烈しかった。父親はその破廉恥を敢て正面から責めはしないが、おりおり苦い皮肉をその言葉の中に交えた。初めは時雄が口を切ったが、中頃から重に父親と田中とが語った。父親は県会議員をした人だけあって、言葉の抑揚頓挫が中々巧みであった。演説に慣れた田中も時々沈黙させられた。二人の恋の許可不許可も問題に上ったが、それは今研究すべき題目でないとして却けられ、当面の京都帰還問題が論ぜられた。