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いもがゆ

薯粥

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1943(昭和18)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,018 字 · 24 页

青空文庫

事の起りはこうだ、足軽が石を運んで通るたびにその侍が同僚たちと口を合わせて嘲弄する。「あのぶ態な腰つきをみろ、満足に石運もできはせぬ、あれで剣道稽古などをするとは笑止なやつだ」「まさにそのとおり、役にも立たぬ稽古がよいなどをするから、大切の役目に日雇い人足ほどの働きもできぬのだ、お上から頂く扶持は盗んでいるのも同様だぞ」若い足軽は、耳にもかけなかった。それで侍たちは図に乗り、なん度めかに通りかかった足軽の足下へ、ひょいと六尺棒をつき出した。重い石を担いでいるので、除けようがなかった。若い足軽はあっと叫びながらのめり、土埃をあげながら転倒した。

「なにをなさる」はね起きたかれは、我慢の緒を切ったらしく、いきなり侍の手から六尺棒を奪い取ると、足をかけてぴしりと踏み折った。「おのれ無礼者」と相手の侍は拳をあげて殴りかかったが、足軽はその腕を逆に掴み、つけ入ったとみるや、腰車にかけてだっと投げた。見ていた侍の伴れ三人は意外な結果にとりのぼせたとみえ、「うぬ叩き伏せろ」と叫び、ひとりは「斬ってしまえ」と喚いて刀を抜いた。足軽は無腰だったが、いま踏み折った棒の半分をすばやく拾いとると、つぶてのように三人のなかにとび込んでいった。