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いもがゆ

薯粥

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1943(昭和18)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,018 字 · 24 页

青空文庫

六

六

いうだけ云うと、三人はすぐに帰っていった。隼人は、やはりそうだったかと思った。今日の喧嘩の原因も「足軽に武道の教授をしている」という反感もあるのだ。そして結局は、足軽が三人の侍を相手にして勝ったとなると、かれらの鉾先が自分に向って来るのは当然である。

「いかがあそばしますか」七重が気遣わしげに良人を見た。

「争いは好まないが」と隼人は困惑しながら、「しかし武道のまことを守るためには、いたずらに争いを避けるだけが能ではない、……受けるより仕方がないだろう」

いかにも気の進まぬようすでそう云った。……その翌々日、鈴木惣兵衛から使者があった。「御前試合の下命があったから、この使者と同道で登城されたい、悪くは計らわぬから……」そういう口上だった。隼人は覚悟をしていたのですぐに支度をし、愛用の剣を持って、使者といっしょに登城した。

案内されたのは本丸の月見櫓の前で、試合の場所には幕が張り廻してあった。席に就いたのは、鈴木惣兵衛とほかに老職二名だけで、間もなく城主水野監物忠善が上座へあらわれたほかには、見物の者はひとりも無かった。梶井図書介は、三十六七になる立派な人物だった。