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いもがゆ

薯粥

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1943(昭和18)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,018 字 · 24 页

青空文庫

五

「さような考え方もございますか知らん」にっと隼人は微笑をもらした、「合戦にのぞんでこの橋ひとつが要害とは、さても岡崎は攻め易うございますな」「…………」「城砦壕塁はいくさの凌ぎで、攻防のかなめは人にあると存じますが、……しかし、その御疑念があるからは申上げましょう、わたくしが人足を致しますのは、おのれの生活をたて、門人衆に一椀の薯粥をふるまいたいからでございます、これよりほかに些かの理由もございません、お疑いになればどのようにも御詮議下さるよう」

五

言葉つきにもまなざしにも、曇りはなかった。それよりも、毎朝三十余人の者に粥をふるまっている事実は、惣兵衛がみずから見ていることだ。――あれだけの人数に、毎朝のふるまいには容易くはあるまい。そう思いやったこともある。また足軽たちに教える「軍兵としての鍛錬」の仕方など、どれをとってもかれの言葉が嘘だとは思えない。ただ残る不審は、なぜ自分が人足までして粥ぶるまいをするかという点だけだった。それを問い詰めると隼人は笑って、「足軽衆には、早朝からの勤めがございます、稽古から戻って食事をするのでは、勤めに遅刻する場合があるかも知れません、稽古も大切ではありますが、日々の勤役に些かでも怠りがあっては、本末を誤ります、それにもうひとつは、……日々の勤めで労れたうえ熱心に武道