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やぶのうぐいす
藪の鶯
三宅 花圃
「藪の鶯」金港堂、1888(明治21)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,356 字 · 65 页
どろぼうの用心かたがた貸したるとおぼしけれど。これも少し無理こじつけの鑑定なるべし。この二階の食客は。年ごろ二十七八にして。目鼻クッキリと少しけんはあれども。かかる顔だちをイキとやらたたえて。よろこべるむきの人もありとぞ。チョイと二ツにたたんだる嘉平の袴。紫のふろしきにつつんだる弁当箱など。まず出来星の官員ならんか。湯がえりとおぼしく。目のふちをほんのりあかくして。窓の上へ鏡をのせ。しきりに頭をかきつけていると。あだなる声にて。
女「アーあたしがそう申すよ」と二階をどんどんあがってきて。チョイと顔を出し。
女「オヤきれいにおつくりが出来ましたネ。たばこの火を持ってきました」と十のうを片手にもって。火鉢の傍へチョイと立てひざをしてすわる。年ごろは三十ばかり色浅黒くして鼻高く。黒ちりの羽織も少し右の袖口のきれかかりたるに。鹿がすりの着物えり善好みの京がのこも。幾度かいけあらいをしたという半襟をかけて。小前がみのあとのすこしはげたるを。松民の蒔絵をした朱入りの櫛で。毛をよせてぐっと丸わげの下へさし込んでいる。ハテあやしやナアというけだもの。火を火鉢へとりながら。