轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
むし
虫
江戸川 乱歩
一~四「改造 第十一卷第六號 六月號」改造社、1929(昭和4)年6月1日<br>五~十二「改造 第十一卷第七號 七月號」改造社、1929(昭和4)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,053 字 · 86 页
全く出来心なんだ。もうあの女に会い度いとも思わぬよ。君も知っている通り、僕は真剣な恋なんて、出来ない男だからね」
という様なことを喋った。なぜ、そうしなければならないのか、彼自身にも、はっきり分らなかったけれど、あの一事を秘密にして置いては、何だか拙い様に思われた。それをあから様に云ってしまった方が、却って安全だという気がした。
狂人というものは、健全な普通人を、一人残らず、彼等の方が却って気違いだと、思込んでいるものであるが、すると、柾木愛造が、人厭いであったのも、彼以外の人間を、異国人の様に感じたのも、凡て、彼が最初から、幾分気違いじみていたことを、証拠立てているのかも知れない。
事実、彼は最早や気違いという外はなかった。あの執拗で、恥知らずな尾行や立聞きや隙見なども、云うまでもなく狂気の沙汰であった。今度は彼は、それに輪をかけた、実に途方もない事を始めたのである。と云うのは、あの人厭いな陰気者の柾木愛造が、突然、新青年の様に、隅田川の上流の、とある自動車学校に入学して、毎日欠かさずそこへ通って、自動車の運転を練習し始めたことで、しかも、彼は、それが彼の恐ろしい計画にとって、必然的な準備行為であると、真面目に信じていたのである。