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おやどりことり
親鳥子鳥
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页
「ふうむ、それは宜かった」
とお父さんは一日働いて来て腹がへっている。
「母校の復興資金のことで態お出になったのですから、私、今度こそは少し纒めて寄附しなければならないと思っていますの」
「ふうむ、それは宜かった」
「宜しゅうございますの! 安心致しました」
とお母さんは大に力を得て、
「けれども他の方の振り合いもございますから、今も申しました通り、私、出すなら余り吝なことはしたくありませんの。如何でしょう、五十円ばかり? ねえ、あなた、五十円丈け?」
「五十円? 五十円何うするんだい?」
とお父さんは初めてお母さんを顧みた。
「母校の復興寄附金でございますよ。その為めにスミスさんがお出になったんですわ」
「スミスさんて何者だい?」
「まあ! あなたは先刻から聴いていらっしゃらなかったのね。道理で御返事が少し頓珍漢だと存じましたわ」
「腹がへっているものだからね。衣食足って寄附金を知るさ」
「それでは後から申上げましょう」
とお母さんは話の腰を折られて、又のことにしなければならなかった。
お父さんは僕のことを横着ものだといって貶しても、自分もこの通り瓢箪鯰である。都合の悪いことは努めて聞き流そうとする。