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おやどりことり

親鳥子鳥

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页

青空文庫

聾耳になったり、老眼になったり」

「聾耳じゃないよ」

「耳がお悪くなったり老眼になったりして、矢っ張り厄年は争われませんわ」

「老眼じゃない。視力が衰弱したんだ」

とお父さんは老眼もお気に召さない。すべて年寄染みたことはお嫌いである。

「衰弱するのはお年を召した証拠じゃありませんか?」

「衰弱必ずしも年の所為じゃない。若いものの方が余計神経衰弱にかかる」

「兎に角好い徴候じゃございませんわ。年寄並みにお気をつけ下さいませ」

とお母さんはお父さんの若がる癖を戒めた。お父さんは黙って煙草を喫っていた。耳に来た初老は目にも来ている。一言もなかったのだろう。僕は四十の声の威力に驚くと共に、この間の大男を思い出して、

「もう余り御無理をなさらない方が宜いですよ」

と孝子の立場から諫言の必要を認めた。

「皆で老人扱いにするね。無論気をつけるさ。俺一人の身体じゃないんだから」

とお父さんは納得したが、無条件ではなかった。真正の仕事は四十からだと主張した後、

「然う然う、この間彼方の雑誌にこの問題を取扱った論文が出ていた。文学者が一番好いものを書いた年齢は大抵四十二だという統計が挙げてあった。