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あしがるほうこう
足軽奉公
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1945(昭和20)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,949 字 · 28 页
四
といわれるのに反して、それまでの何処よりも生活は厳しく、田舎から出た者には人情も風も凛冽だった。そして兄妹は師走の寒さにむかって東海道を西へとまた旅を進めた。……正月を迎えたのは駿府だった。さすがに駿河は暖かく、土地も豊かで住みよかったが、出世の手蔓には縁が遠い、それで二月になるのを待ち兼ねて、見附の駅から北へはいり、天竜川に沿って信濃路へと向った。
山を越え川を渡り、谷峡を辿る嶮しい旅路を続けて、飯田城下も空しく過ぎ、赤穂という小さな駅に泊ったときのことであった。……四五日雨が降って、木賃旅籠も同様なその宿には、貧しい行商人や、旅をまわる一文商人や、門付芸人などが十四五人も泊っていた、これらの人々は炉端へ集ってよく身の上ばなしをする、生活の苦しさ、世間のつれなさ、そして自分の不運なまわり合せなど、語ることが慰めであるような調子で話し合うのだった。……これらの人々に殆ど共通しているのは、「運が悪かった」という点であった。すべてが運の悪いために、あたら一生を落魄してしまったというのであった。
四
そういう人たちのなかにひとり、いつも黙って風車を作っている老人がいた、飴を売るのが商売であるが、景物に付けてやる風車を、雨の日などにはそうして手作りにするのである、むろん反故紙や傘の古骨などを使った粗末なものだが、