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てんき

転機

伊藤 野枝

「文明批判 第一巻第一号、第二号」1918(大正7)年1月、2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,656 字 · 67 页

青空文庫

五

もしそれが本当に卑劣な心からであっても、そんなに卑劣には何がしたのだろう?

自分の力でたつ事が出来ないものは、亡びてしまうより他に仕方がない。そうして自から、その自分を死地に堕す処に思いきり悪く居残っているものが亡びるのは当然のことだ。それに誰が異議をいおう。だのに、私はなぜその当然のことに楯つこうとするのだろう?

私はそこに何かを見出さなければならないと思いあせりながら、果しもない、種々な考えの中になにも捕捉しえずに、何となく長い考えのつながりのひまひまに襲われる、漠然とした悲しみに、床についても、とうとう三時を打つ頃まで私の目はハッキリ灯を見つめていた。

五

次の日も、その次の日も、当座は毎日のように、私は目前に迫った仕事のひまひまには、黙って一人きりでその問題について考えていた。Tのいったことも、漸次に、何の不平もなしに真実に受け容れる事ができてきはしたけれど、最初からの私自身が受けた感じの上には何の響きもこなかった。

Tの理屈は正しい。私はそれを理解することはできる。しかし、私にはその理屈より他に、その理屈で流してしまうことのできない、事実に対する感じが生きている。