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てんき

転機

伊藤 野枝

「文明批判 第一巻第一号、第二号」1918(大正7)年1月、2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,656 字 · 67 页

青空文庫

またその難儀な道を帰らねばならないことが、私にはただもう辛くてたまらなかった。

「そうだね、やはりその道が一番楽でしょう。」

といわれて、また前よりはいっそう冷たく感ずる沼の水の中に足を入れた。

ようようのことで土手の下まで帰って来はしたものの、足を洗う場所がない。少し歩いているうちにはどこか洗える処があるかもしれないと思いながら、そのまま土手を上がった。白く乾き切った道が、気持よく走っている。けれど、一と足そこに踏み出すと思わず私はそこにしゃがんだ。道は小砂利を敷きつめてあって、その上を細かい砂が覆うている。むき出しにされて、その上に冷たさでかじかんだ足の裏には、その刺戟が、とても堪えられなかった。といって、今泥の中から抜き出したばかりの足を思い切って草履の上に乗せることもできなかった。

「おい、そんなところにしゃがんでいてどうするんだい。ぐずぐずしていると日が暮れてしまうじゃないか。」

そういってせき立てられる程、私はひしひし迫ってくる寒さと、足の痛さに泣きたいような情なさを感ずるのだった。それでも、両側の草の上や、小砂利の少ない処を撰るようにして、やっとあてにした場所まで来て見ると、水は青々と流れていても、足を洗うような所はなかった。