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はちのき

鉢の木

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1944(昭和19)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,534 字 · 28 页

青空文庫

まったく思いがけない縁談なので初めはあっけにとられた、そしてまだ年がゆかぬからという理由で鄭重に断った。かれはもちろん旧主へ帰参する望みをもっていたし、たとえそうでなくともこんな山里の、しかも骨のぬけたような男に、妹の一生を託すつもりはなかったのである。つまりそういう意味を籠めて断ったのであるが、それから一年して去年の冬のはじめに、再び老人が来ておなじはなしをもちだした、――明ければ十八になるということだし見かけのなりかたちも早いとは思えない、今年うちに盃だけでもとり交わしたいから、そう云って即答を求めた。四郎兵衛としてはまえの断りでこちらに縁組の気持のないことを暗示したつもりだったが、正直に年の長けるのを待っていたと聞いて、ひどく当惑した。それでやむなく苦しい口実を設けた、――実は旧主のもとに約束を交わした者もあるのでせっかくながらこの縁談はご辞退しなければならぬ、いかにも苦しまぎれな口実だったがそう云ってはっきり断った。権之允老人はひじょうにはらをたてた、――それならどうして初めにそう云わなかったのか、年が若いと申すから一年待ったのに、今になって他に約束があるとは老人を愚かにしすぎる、さような返辞を持って帰れると思うか、膝を叩かぬばかりの怒りかたで、ついにはこれまでの恩義がどう