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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
227 怪盗系図
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页
「どうだ、気分は? 少しは落着いたか」
平次の調子は平凡で優しくさえありました。
「え、有難うございます。もう大丈夫です。先刻はあんまりびっくりしたんで」
お栄はそういいながら、まだ動悸の納まらぬらしい、胸のあたりを押えるのです。
「お前にきいたら分るだろうが、伯父さんの半兵衛は浪人者だということだが、何処の藩中だえ」
「それが私にはわからないんです」
「姪のお前にか?」
平次も少し詰問的になりました。お栄の調子は少し変り過ぎていたのです。
「でも、それにはわけがあるんです」
姪が伯父の素姓を知らないわけを、お栄はどう辻褄を合せる気でしょう。
「そのわけというのは?」
「私は、伯父さんの本当の姪じゃなかったんです、――恥を言わなきゃわかりませんが、私が物心ついた時は、親も兄弟もない、見世物小屋の親方に養われて居る孤児でした。遠い田舎で水呑み百姓の娘に生れて、食うに困って売られたものか、それとも、親の許さない不義悪戯の果てに出来た子で、里流れになって見世物の親方の手に渡ったか、それはわかりませんが、兎も角、物心ついてから十五、六まで、日本中を渡って歩く、旅の見世物師の小屋で育ち、いろいろの芸を仕込まれて舞台に立っておりました」