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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

227 怪盗系図

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页

青空文庫

つぶての手紙

「八、もう臨終だ――死んでしまえば同じ仏様だ。そっと其処へ寝かしてやれ」

「ヘエ」

「お栄はいずれ縛られる時が来るだろう」

「――」

「可哀想に、縄を解くような顔をして、後ろにまわって首筋をやられたのだろう。相手を油断させるのがあの女の術だ」

「それにしても癪にさわりますね。あっしの肩を蹴飛ばして外へ出て、引っ返してこんな虐たらしい事をしたんですね」

「口を塞ぎたかったのだよ、半次は余計な事を知っていたからだ。それに大事の品が手に入って、半次にはもう用事がなかったのだ」

「太てえ女じゃありませんか」

「おや、そう言えば、変な唸り声がすると思ったら、まだ金太の縄を解いてやらなかったのだね」

平次は部屋の隅に俵のように転がされている金太を振り返りました。

つぶての手紙

その翌日、八五郎は夜の明けるのを待って、明神下の平次のねぐらに飛び込んだのです。

「親分」

「八か」

いつもの朝寝坊に似気なく、平次はもう起き出して、男手の覚束ない恰好で朝飯の支度などをしておりました。

「――」

八五郎は喉まで出た洒落をグッと呑み込むと、意気地がなくも、眼頭が熱くなります。あれほど仲の好い平次とお静は、平次が旅へでも出かけた時でなければ、別々の屋根の下に寝た経験はなかったでしょう。