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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
227 怪盗系図
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页
今までも幾度か危ない目に逢い、夫平次の手伝いもしたはずのお静ですが、だれも見ていない場所で不意に夫の手に救い出されると、矢張り小娘のような心持にならずにはいられなかったのでしょう。
「相手に取っては大事な人質のつもりだ、滅多に殺しはしないよ――ところでこうなっては、お前を一人置くわけにも行くまい。暫らく大家さんのところに頼んで置こうか」
路地の外には家主の吉兵衛が住んでおります。そこへ暫らくお静を預けて、平次はそのまま両国へ。
「あれ、お前さん。そんな形で」
お静が気を揉むのも無理のないことでした。平次が引っかけているのは、下っ引の若松に借りた、七つ下りの浴衣で、頬冠りをして七三に尻を端折ると、あつらえたような自棄な扮装になるのです。
「なアに、おれの装束は、若松が着込んで両国で待っているよ。心配するな」
ポンと飛び出すと、雷鳴は遠退きましたが、雨足は一としきり繁くなって、七つ下がりの浴衣を、未練気もなく洗います。
そこから両国まで、平次は逸散に駆けつけました。相手の構えの立ち直らぬうちに打つべき手は打ちつくして、一気に押しきるつもりだったのです。
「八か」