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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
227 怪盗系図
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页
「腐った羊羹のことはもう沢山だ」
「いえ、尾張のお留守居から、鹿爪らしく挨拶が来るとほんの一刻も経たないうちに、八丁堀組屋敷の、吟味与力筆頭笹野新三郎様のお玄関へ、斑組の手紙が投り込まれたんだから驚くじゃありませんか」
「だれが持って来たんだ」
「小僧ですよ。酒屋の御用聞かと思っていると、石っころを包んだ手紙を投り込んで、何処ともなく消えてしまったそうで」
八五郎の報告は思いのほか怪奇なものでした。さすがの平次も暫らくは洒落を封じて、神妙に聴いております。
「その手紙に何んと書いてあった」
「借りて来ましたよ。これですがね」
八五郎は内懐ろを捜って、恐ろしく野暮な財布の中から十六に折った一枚の半紙を取出しました。
畳の上で折目を伸ばすと、いつもの蚯蚓をのたくらせた女文字で、
当斑組より八丁堀屋敷に預け置候金子一万両は至急当方にて入用に付明日正午刻参上受取る可候、尾州家に御送り届けの儀は全くの筋違ひに付堅く無用に被遊可く為念申入候 敬白
月 日斑組首領
こうのたくらせているのです。
「――」
平次は煙草を卦算代りに、椽から吹く風に押えて、思わず腕を組みます。
「ね、驚くでしょう、親分」