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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

227 怪盗系図

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页

青空文庫

平次は丁度宜い折をつかんで、日ごろのうっぷんを漏らすのです。

それだけいえば、平次の気も済みました。それを聴いて三人の武家がいそいそと帰った後で、笹野新三郎は折入った態度でこういうのです。

「平次、面白くない行き掛りもあるだろうが、これは是非、お前に埒を明けてもらわなければなるまい」

「ヘエ」

「まかり間違えば二十八人の、あたら若い武家の命だ。尾州藩の面目もさることながら、それより恐ろしいのは、尾張六十一万九千石の蔵屋敷へ入り込んで、ヌケヌケと一万両の大金を奪いとったと思う悪者どもの増長心だ。これを捨て置いては、天下の法がすたる」

笹野新三郎の語気は、誠実な良吏らしい熱心さが溢れるのです。

「よくわかりまして御座います。奪い還せるかどうかそこまではお請合いいたし兼ねますが、兎も角も、精いっぱいのことをいたしてみましょう」

それは平次の驕りのない心持だったのです。

早速尾州藩の蔵屋敷へ行くと大橋要人が自分で案内に出て、

「平次殿、平次殿」

と下にも置かぬ扱い。一緒について来た八五郎などが、すっかり良い心持になって、鼻唄をうたったり、口笛を吹いたり、弥造を拵えたり長んがい顎を撫でたりしております。