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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
227 怪盗系図
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页
お静は思わず入口に立ち塞がって、お銀の帰りを止めるのです。
「有難う御座います、お神さん。御親切は身に浸みて嬉しいけれど、私はやはり谷中へ帰らなきゃなりません――それじゃ親分」
お銀は平次にあいさつをして、何んの躊躇もなく、薄暗い土間で下駄など探しているのでした。
「親分」
八五郎は妙に穏やかでない心持でした。ここで親分の平次が、たった一と言「まア宜かろう」といってくれさえすれば、お銀はそれを力に思いきって、恐ろしい夜道を谷中へ帰る気にならなかったでしょうが、苦蟲をかみつぶしている平次の顔を見ると、八五郎輩が横合いから口を出して、それを何う斯ういう筋合ではないような気がするのです。
「よし、それじゃ、おれが送ってやろう」
ツイ不用意な言葉が、八五郎の唇に上りました。この無類のフェミニストは、お銀の困惑を黙って見ているにしては、少しばかり人が好過ぎたのです。
「ま、済みませんね、それじゃお願いいたします。銭形の親分さん、お神さん」
お銀は丁寧に別れのあいさつをして、促し立てる八五郎と一緒に、路地の星明りに立っておりました。
「待って下さいな、八五郎親分」
さっさと先へ行く八五郎の後ろから、粉々として掛香が匂います。