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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
227 怪盗系図
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页
お楽は側から声援をおくるのです。
「でも、その嫁入り先の名前だけは堪忍して下さい。いくらなんでも私はきまりが悪い」
お銀はそういって照れ隠しらしく銚子を代えるのです。
やがて灯りが入りました。八五郎は、昨夜からのごちそう攻めで、さすがにげんなりしてしまったものか、しきりに尻をモジモジさしておりますが、肝腎の平次は悠然と坐り込んで、テコでも動きそうはありません。
「ちょいと八五郎親分」
「何んだえ、用事があるならそこで言いねえ。障子のすき間から、おいでおいでなんかしやがって、気味が悪いじゃないか」
「だからさ、口説くかも知れないから、ちょいと、お耳を貸して下さらない?」
それはお楽でした。キビキビした調子で、男にいやとはいわさない呼吸です。
「何んだい用事は?」
「ま、なんてお顔だろう、――女の子に呼ばれたら、もっと器用に返事をするものよ」
「口説いたってダメだよ。先口がつかえているんだから」
「八五郎親分の煙管みたいね」
「何をいやがる」
八五郎は脂でジワジワする煙管をあわてて仕舞い込みました。どうもこの女とはまともに太刀打ちが出来そうもありません。
「だから、ちょいといらっしゃいよ、――ね八五郎親分、お銀さんの心持が親分にはわからないのかねえ」