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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

227 怪盗系図

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页

青空文庫

「ま、怖い、――でもね、八五郎親分のお言葉だが、野郎は少し変じゃありません。これでも新造のつもりよ。出来はあんまりよくはないけど、阿魔ッとか何んとかいって下さいな」

「何をッ、阿魔ッ」

「うれしい、そのコツよ」

お楽は椽側で、八五郎にしがみつくのです。

「放せッ、やい、畜生ッ」

「あれ、今度は畜生と来た、少し浅ましいわねえ」

「銭形の親分には、お静姐さんという、それはそれは貞女のおかみさんが付いているんだぜ」

「それがどうしたのさ、八五郎親分」

「その江戸一番のおかみさんを泣かして、化け猫のようなお銀なんかに、ちょっかいを出す親分じゃねえ」

八五郎は精いっぱいに見得を切るのです。八五郎に取って親分平次の恋女房お静は、神聖犯すべからざるベアトリーチェだったとは、幾度か話しました。

「おや、おや、変なことを仰しゃるわねエ。お前さんは十手捕縄を預かる立派な御用聞かと思ったら、お静姐さんの番人だったのかえ」

「何をッ」

「それともほかの女が銭形の親分を口説いちゃいけないという、御布令でも出たというのかえ」

「な、何をいやがる」

「第一、お前さんが親分の傍に、出来損いの狛犬みたいに頑張っているのが、平次親分のお気に召すかどうか、ちょいときいて御覧なさいよ」