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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

227 怪盗系図

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页

青空文庫

乞食橋の煙草屋、番太に毛の生えたようなケチな荒物屋だが、婆さんが内職に、二階を貸して、出合い座敷料をかせいでいるんで」

「それで」

八五郎も漸くお山同心の聴き耳立てているのに気がついて、報告レールの上に乗っかります。

「親分の推察通り、まさに図星で。今から十一日前、丁度近江屋半兵衛の殺された晩、顔見知りの近江屋の番頭宇八がやって来て酉刻半(七時)過ぎから戌刻半(九時)近くまで、女でも待っている様子で、焦々しながら煙草ばかり呑んで――何時までもこうしちゃいられない、もう一軒行くところがあるから、若し女が来たら、改めて日取りをきめようといってくれ――とぼんやり帰って行ったそうですよ」

それは実に思いもよらぬ新事実でした。その煙草屋の婆さんのいうことが本当なら、あの晩の宇八の行動は立派に証明されるわけで、近江屋半兵衛が殺された時刻に、申し分のない不在証明を持っていることになります。

「まさか嘘じゃあるまいな。煙草屋の年寄りが、いい含められて拵え事をいってる様子じゃなかったか」

「それは大丈夫、十手を見せての上の話で、拵え事する隙もありませんよ。それに店番の小僧が宇八に頼まれて、一升買ってつまみ物まで用意させられていますよ」