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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

227 怪盗系図

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页

青空文庫

賽の目

おれは死骸を取りおろす」

「一人で大丈夫ですか」

平次はそれには返事もせずに、先ず死骸の首から千両箱を取りおろしました。縄の掛けようなどは、なかなか念入りで、貫々は思いの外軽く、開いている蓋を払って見ると、中には五、六十枚の小判が入っているだけです。

死骸の首の右側――千両箱を掛けた縄の当ったあたりは、物凄い傷口が開いて、血は肩から胸から、腰のあたりまで浸しております。縄はさして汚れていないところを見ると、死んでしまってから、此処に運んで、椎の木に縛ったものでしょう。

「手伝いましょうか、親分」

八五郎はもう一度お勝手口から出て来ました。

「娘はどうした」

「気分が直ったようです、――こいつは全く女子供に見せる代物じゃありませんね」

「手を貸せ。とも角家の中へ入れて、仏様らしくしよう」

「ヘエ」

平次は縄の結び目から、死骸の身体まで調べながら八五郎と二人、血潮に汚れるのも構わず、椽側に運び入れました。

「おや、変なものがありますよ」

八五郎は死骸の腕――捲くれた袖から出た二の腕の外側を見ております。

「何があるんだ」

「変な入墨ですよ」

賽の目

「どれどれ」

平次は庭の土の上に置いた行燈を持って来て、死骸の側に寄せました。