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ながやてんいちぼう

長屋天一坊

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,453 字 · 57 页

青空文庫

そこには幾許かの酒肴も出たものだろう、同志たる立場上かれらは景気をつけて、大家の非を鳴らした。

「あの禿の野郎、おれに向ってけえず買いがどうだとかこうだとか、とんでもねえことをぬかしゃあがった」

同志の一人なる左官職は、こう呻いた。

「私はね、私はそれは店賃は溜めました」

一人は、早くもほろ酔いになって云った。

「恥を話さなければ理がとおらない、だから云いますけれどもね、店賃は溜めています、けれどもそれだからといって、書画にも劣るの、人間ではないとまで云われては、……皆さんの前ですが、私は、こんな、く……」

「それは尤も、源兵衛さんの泣く気持は尤も、わしもそれを云われた、わしは佃煮行商、けれども人でなしと佃煮とは無関係」

「とにかくてんでんが、愚痴を並べていてもしょうがねえ」銀太が先住民の貫禄をみせてこう云った、「いったいどうして禿にあんな憑き物がしたか、病気の根はなにか、どうしたらあの気違え沙汰を治すことができるか、こいつをまず相談しようじゃあねえか」

「お、お、お、お、ヘヒーヘヒー」

奇声をあげたのは、吃りの勘次である、彼は鋸の目立てを業とする、そして独身者の一人なのだが、本格的な吃りであって、いつか「明日はたぶん雨だろう」