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ながやてんいちぼう
長屋天一坊
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,453 字 · 57 页
第九席 嘘はやはり嘘のこと
「これはしたり若殿様、そのようにおうろたえ遊ばすと、姫ごぜのあられもないと世上の物やらいになりやすぞえこれまあちょっと、お静かに、あれ、え、この脳天気め、じたばたするとうぬ、こうするぞ、抜け作野郎」
「ごめんだよ、ごめんだよう、きゅッ」
さて演者は、講演を急ぐことにしようと思う。
第九席 嘘はやはり嘘のこと
並びに事件落着大喜利のこと
事件発祥より第三月めに入ったとき、吾助の督促は、漸次に現実性を露呈して来た。御殿新築のための用材は、今や長屋脇の空地に山を作り、指定地域の長屋住人に対しては、連日の如く期限切迫の警告を鳴らし、仮にも延期の許さる可からざる旨を反復厳達した。
「もういけねえ、俺あ引越しの支度にかかるよ、此処も長え馴染だったがなあ」
「お互えになあ」
こんな会話を聞くたびに、銀太金太は身の縮む思いだったろう。諦めのいい家庭の二三は既にそれぞれ他へ住居を契約して、長屋からして泣く泣く移転したくらいである。が、ところがである。……それは或る晴天の、初夏の風爽やかなるところの、日の、午後二時頃のことであったが、三人の供を従えた一人の立派やかなる武士が、繩屋吾助の家へやって来てからに、そこでかなりな悶着が始まったのである。