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ながやてんいちぼう
長屋天一坊
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,453 字 · 57 页
第五席 長屋一同雨宿会議のこと
「うるせえなこの禿は、おらそんないかがわしいけだものたあ、ひっかかりはねえ、つまらねえいんねんをつけると承知しねえぞ」
「なにを云うんだ、禿とはなんだ」吾助としてはむかついたわけである、「いかがわしいのはおまえのほうだ、儂も佐野源左衛門の末孫となってみれば、そこは家名のこともあるから忍耐するのだけれども、なんだおまえは、先祖も知らず家柄も血筋もわからない、それでも人間かえ、こ、な、なんだ、暴力を振う気か、こ、こ、そんな物を持ちやがって、この、……ひっ」
吾助は表へとび出し、なにか一言ぴんとした言を云ってやろうとしたらしい、が、銀太が息杖を持って出て来るようすであってみれば、ぴんとした言は断念したわけだろう、とりあえず泥溝板を踏み鳴らして逃げていった。
「こいつあなんとかしなくちゃあいけねえ、なんとかあの憑き物のおちるくふうをしなくっちゃあ、長屋一統の迷惑だぜ」
銀太は息杖を置きながら右の如く感慨をもらし、ここに長屋同志の対策会議を開催するという、決意をするに到ったのである。
第五席 長屋一同雨宿会議のこと
並びに金太銀太名案のこと
或る雨の日の午後のことであったが、長屋同志の重立った者が十人、売卜者の尾崎不識斎なる者の宅に集合した。