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ようきなきゃく

陽気な客

山本 周五郎

「苦楽」苦楽社、1949(昭和24)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,086 字 · 46 页

青空文庫

六

「あての金もどせ、どあほ、ぬすとう、ええくやし、あんな小使なんぞに恥かかされて、なにが高級的や、金もどして出ていけ、ぬすとう、ええどうしたろ」

「済まん堪忍して、わいが悪かった、これからあんじょうするよってな、これや」

おれは憮然と浮かない気分になった。多少は痛快だなどと思った早計を自分で嗤い、かれらの脇をすりぬけるようにして階段をおりた。……そこにはいつかのように仲井天青がおり、女中の花ちゃんと喫茶部のそえ子が立っていた。

「出ましょう仲井さん、また特別演出ですよ」

おれはこう云って自分の醜いざまを立聞きされた者かなんぞのように、靴をつっかけざま外へと逃げだしたものだ。

六

――もちろんその日は社を休んで飲んだ。天青はどうにか都合をつけたとみえて、どこの飲屋でも断わられるようなことはなく、ある程度までは従前どおり飲ませてくれた。

「あのちょび髭を嗤ってはいかんぜ、彼はきみ彼であって彼だけのものはあるんだ」

天青はその夜しきりに社長を弁護した。

「人間があそこまで裸になるということは俳諧的心境ではないんだ、きみは廊下にへいつく這った彼の姿から眼をそむけたが、あの姿に人間ぜんたいの原罪を感ずることができなければとうてい文学をやる資格なんぞありやしないぜ」