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ゆきやなぎ

雪柳

泉 鏡花

「中央公論 第五十二年第十三號」1937(昭和12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 页

青空文庫

が、けど何でもない事や。肋膜、肺炎、腹膜炎、神経痛、胸の病、腹、手足の病気、重い、軽い、それに応じて、施術の法があって、近頃は医法の科学的にも、灸点を認めているのやが、その医法をも超越して、(時々むずかしい事をいいます。)気違が何や……癩でも治るがに。胃腸なぞはそりゃに、お茶の子じゃぞ。すぐに一灸で、けろりとする。……腹を出しなされ、は、は、は、これでもあんた、島田髷やて、昔馴染には。」

「ま、ま。」

「療治の用具もちゃんと揃えて持合わせておる、に。」

「まあ、まあ。」

「熱いと思うてかに、熱い……灸やから。は、は、は。微塵も、そりゃない。それこそ弘法様示現の術や、ただむずむずとするばかり。」

「まあ、しかし。」

「ただ、あんたのものを使うというては、火鉢の火を線香に取るばっかりや。」

弱った。

「それやかとても、火道具はちゃんとここに持っておるがや、燐寸なぞは使わんぞ、艾にうつす附木には、浅間山秘密な場所の硫黄が使うてあるほどに。」

なお弱った。

「どうも、灸だけは……ですよ。」

「お嫌いかに。」

「嫌いにも、なにも。」

「好嫌いは言うておられんぞに、薬には。それやし、何せい、弘法様の……あんたお宗旨は。