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ゆきやなぎ
雪柳
泉 鏡花
「中央公論 第五十二年第十三號」1937(昭和12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 页
寸法とかいうもんで、ここへ来ての以上、一口、酒となれば、芸妓も呼んでやろう、それ、ちゃんとその了簡は見えてある。なれど、それはさせんぞ。今日だけは、こちらへ万事まかせてくんされ、別懇のお附合や。そのかわり、わざと芸妓は呼ばん。尼がお対手して、姪がお酌やて、辛抱ものや。その辛抱ついでにな、お肴もありあわせやぞに。惣菜さながらの。」
いよいよ口を利かせません。立つにも立たれはしないから、しばらく腰を据える覚悟をしました。が、何分にも、餒れた黄肌鮪鬢長鮪が可恐しい。
「菎蒻。」
「こんにゃく。」
口の裡でむぐむぐ言ったのが耳へ入ったか、聞返されて、驚いて、
「卯の花なぞが結構です。」
また、うっかり、下の縁側を卯の花が、葉を搦んだ白い脚が、寝衣の裳を曳いて寝みだれ姿で寝床からと……その様子が、自分勝手の胸にあった。ただし、他家様のお惣菜を、豆府殻、は失礼だ。
「たとえばです。」
「お好きか、なんぼなと、内で間に合う、言いつけようでに。さ、もう、用意はしておったが、お燗の望みは熱いのか、ぬるいのか、何せい、程のいい処。……もう出来たろうに、何しとるぞ。」
と、手をたたく。