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ゆき
雪
中谷 宇吉郎
「雪」1938(昭和13)年 11月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,536 字 · 152 页
一〇
それではこの大気中に充満し浮游している細塵とは一体何であるかというと、例えばその一つとして煙の粒子などを挙げることが出来る。あるいはまた塩の分子の集合から成るものもある。それは浪のために海水の一部がちぎれて極微な粒子となって空中に四散して上昇して行ったものなのである。これらの細塵や塩の微粒子が凝縮の核としては一番役立つものであるが、それらが大気中に少い場合にはイオンが凝縮の芯になる場合もある。
以上に述べた大気中の細塵やイオンは雪の核となるばかりではなく、雨とか雲とか霧などの成因ともなるのである。
一〇
雪とは直接関係がないが、大気中の細塵が霧の成因となるということを最もよく説明する事柄をここに記して見よう。われわれは、昔からロンドンの市街に霧が深いということを聞いている。霧はロンドンの名物とまでいわれている位である。以上に述べた大気中の細塵の研究は、実はロンドンの霧の研究委員会の仕事として発展して来たものなのである。ところが、東京も年毎に霧が深くなって行くようである。これは古老の言を待つまでもなく、われわれ自身もしばしば見ているところであって、殊に晩秋から冬にかけて、夕方から市街一面に知らぬ間に下りて来る霧は、十米先の物もかくしてしまうような状態となり、自動車はその速度を落し、街の灯は霧の中へ沈んで、