轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かぜ
風
壺井 栄
「文芸」1954(昭和29)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,702 字 · 78 页
お寺の土間は暗く、おくさんは年よりなので、泥だらけの子供に気がつかなかったらしく、泥によごれた茂緒の手にもハクセンコウという花型で押した白い葬式菓子をにぎらせた。白い菓子は、たちまち泥色になったが、それでも茂緒はにこにこしていた。家にもどると母はすごく房次をどなりつけ、小突きまわしながら泥によごれた着物をぬがした。それはよそゆきだったのだ。
そのとき、しくしく泣いていた房次のことを、茂緒はよく思いだす。今もそれだった。そんなこともあってか、子供のときは、わりに気の合った房次であるが、十五年も別れて暮せば、昔、着物の背中と前を一しょによごしたことなど、忘れているように見えた。一つ釜の飯を食わねば、心はだんだん離れるものだろうか。茂緒はとうとう何もいわずに、泣きべそのような顔で房次の家を出た。バスケットを持っている茂緒をいぶかしがりもせず、嫂は声だけで送りだした。外に出ればもう新しい気分もわいてきて、そっちの方へひかれる力は強かった。
新しい家に修造はもうきていて、茂緒をむかえた。
「あら、ずいぶん早かったんですね。」
うれしさに声もうわずっている茂緒を、修造はその両手をとって上に引っぱりあげた。