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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
岡本綺堂『飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:飛騨の怪談、影、画工と幽霊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,271 字 · 263 页
おつや あら、なにが怖いのさ。太ァちゃんは不断から強い強いと自慢して、将来は拳闘家になると威張っているんじゃないか。ここにはこの通り、おとっさんもいるし、あたしも居るし、このお客様もおいでなさるし……。狐が来たって、狸が来たって、なにが来たって、びくとする事があるもんかね。
(おつやが「このお客様」と云った時、太吉はまた悸えておつやに獅噛み付く。おつやも気がついて、旅人をみかえる。)
おつや おかしいね、この子は……。(笑う。)こちらが知らない方だもんだから、お前は人みしりをするんだね。こちらは立派な紳士さんで、なんにも怖いことは無いんだよ。
旅人 わたしはさっきから其の子に嫌われているんですよ。
重兵衛 こうして鮓を下すったりなんかするのに、そいつは手も出さなければ、お辞儀もしねえ。仕様のねえ馬鹿野郎だ。
おつや ほんとうに仕様のないお馬鹿さんだね。(鮓を見て。)じゃあ、これはこちらが下すったの。太ァちゃんの代りに、あたしが一つ御馳走になっても好いかしら。
旅人 どうで旨くはありますまいが、さあ、さあ、遠慮なしに食べて下さい。
おつや 行儀の悪い千松でございます。