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ひだのかいだん

飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選

岡本 綺堂

岡本綺堂『飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:飛騨の怪談、影、画工と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,271 字 · 263 页

青空文庫

(五)

隣村にも無い。約り何処から持って来たのだか判らずに了った。」

「其の小児は何うしました。」

「まあ、漸々に話す。其の小児の事よりも、先ず祖父さんの方を話さなければならない。祖父さんは強い人であったから、別に何とも意にも介めずにいた処が、対手の方では執念深く怨んでいて、三日の後に残酷な復讐を為たよ。」

安行の声は少しく顫えて聞えた。

(五)

「復讐……。山が……。一体どんなことを為ました。」と、市郎も思わず摺寄ると、安行は今更のように嘆息した。

「それから三日目の晩に、祖父さんは用があって又隣村まで行ったが、夜が更けても帰って来ないので、家中の者も心配して、松明を点けて迎いに出た。其晩は真闇で、寒い山風が吹き下していた。で、先夜山※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)から小児を奪返したという場所へ来ると、祖父さんは血だらけになって死んでいた。さあ大騒ぎになって、よくよく死骸を検めると、人か獣か知らないが何でも鋭い牙のある奴が、背後から飛び付いて喉笛を食い破ったらしい。祖父さんも幾らかは防いだと見えて、手や足にも引っ掻かれた爪の痕が沢山あった。