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ひだのかいだん

飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選

岡本 綺堂

岡本綺堂『飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:飛騨の怪談、影、画工と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,271 字 · 263 页

青空文庫

(四十六)

、第4水準2-80-51)なるものを十分に研究したいと思った。冬の夜の明けぬ中に富山を発って、午後四時過る頃にここへ着いたのである。

安行の葬儀は市郎全快の上で営む事に決したので、一旦は火葬に附し、其遺骨は広い座敷の正面に祭られてあった。親戚や近所の人々も大勢控えていた。忠一の母お政も来ていた。それ等に対する挨拶は後にして、忠一は先ず市郎の病室に入った。

市郎は書斎の八畳に寝ていた。其傍には冬子が看護していた。

「あら、兄さん。」

「どうしたい。飛だ騒動が持上がったもんだね。」と、忠一は其枕元に坐り込んだ。室内には既う洋燈が点っていた。

(四十六)

「冬子さんから電報を打ったと云う談は聞いたが、よく早く帰って来られたね。」

市郎は痛む手を抱えながら起きようとするのを、忠一は慌しく制した。

「まあ、無理をしずに寝て居たまえ。阿父さんは何うも飛んだ事だったね。そこで、君の痛所は何うだ。もう快いのか。」

「いや、まだ悉皆快いという訳には行かないよ。何でも三週間ぐらいは懸るだろうと思うが……。併しまあ、生命に別条の無いのが幸福さ。」

市郎は苦笑いした。顔の色はまだ蒼ざめていたが、元気は左のみ衰えたようにも見えないので、忠一も先ず安心した。