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しゃべりすぎる

饒舌りすぎる

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 55 页

青空文庫

としづは低頭して、抱いている子を見せた、「これが小十郎でございます」

「そうですか、丈夫そうなよい子だ」土田は幼児に笑いかけた、「坊や、幾つだ」

小十郎は母の顔を見、それから片手を出して、慎重に三本を伸ばして差出した。

「ああ三つか、おりこうだな」土田は手で幼児の肩をそっと叩いた、「お父さまに負けない立派な侍になるんだよ」

「あの」としづが云った、「わたくしうかがいたいことがございますのですけれど」

「失礼ですが御用がありますから」と土田は遮って云った、「――どうぞお大事に」

そして顔をそむけてそこを去った。

土田正三郎は十太夫の危篤が伝えられたとき、仏間にこもって夜を明かした。そういう噂が弘まった。十太夫の死後も、七日毎の供養をひそかに行なった。家人の誰にも知れないように、仏間で夜明けまで誦経してすごした。――こういう噂も伝えられた。土田の妻しのぶの実兄である篠原頼母から出た話で、妻のしのぶだけが知っていたのだという。だが、そんな噂も土田正三郎に対する反感をたかめる役にしか立たず、その評判は少しもよくならなかった。そして六年という月日が経ち、土田正三郎は三十九歳になった。