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こうやひじり
高野聖
泉 鏡花
「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页
(はい、はい。)
(いいえ、別のことじゃござんせぬが、私は癖として都の話を聞くのが病でございます、口に蓋をしておいでなさいましても無理やりに聞こうといたしますが、あなた忘れてもその時聞かして下さいますな、ようござんすかい、私は無理にお尋ね申します、あなたはどうしてもお話しなさいませぬ、それを是非にと申しましても断っておっしゃらないようにきっと念を入れておきますよ。)
と仔細ありげなことをいった。
山の高さも谷の深さも底の知れない一軒家の婦人の言葉とは思うたが保つにむずかしい戒でもなし、私はただ頷くばかり。
(はい、よろしゅうございます、何事もおっしゃりつけは背きますまい。)
婦人は言下に打解けて、
(さあさあ汚うございますが早くこちらへ、お寛ぎなさいまし、そうしてお洗足を上げましょうかえ。)
(いえ、それには及びませぬ、雑巾をお貸し下さいまし。ああ、それからもしそのお雑巾次手にずッぷりお絞んなすって下さると助ります、途中で大変な目に逢いましたので体を打棄りたいほど気味が悪うございますので、一ツ背中を拭こうと存じますが、恐入りますな。)
(そう、汗におなりなさいました、さぞまあ、お暑うござんしたでしょう、お待ちなさいまし、旅籠へお着き遊ばして湯にお入りなさいますのが、旅するお方には何よりご馳走だと申しますね、湯どころか