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こうやひじり

高野聖

泉 鏡花

「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页

青空文庫

)と向う向でいいながら衣服の片褄をぐいとあげた。真白なのが暗まぎれ、歩行くと霜が消えて行くような。

ずんずんずんずんと道を下りる、傍らの叢から、のさのさと出たのは蟇で。

(あれ、気味が悪いよ。)というと婦人は背後へ高々と踵を上げて向うへ飛んだ。

(お客様がいらっしゃるではないかね、人の足になんか搦まって、贅沢じゃあないか、お前達は虫を吸っていればたくさんだよ。

貴僧ずんずんいらっしゃいましな、どうもしはしません。こう云う処ですからあんなものまで人懐しゅうございます、厭じゃないかね、お前達と友達をみたようで愧しい、あれいけませんよ。)

蟇はのさのさとまた草を分けて入った、婦人はむこうへずいと。

(さあこの上へ乗るんです、土が柔かで壊えますから地面は歩行かれません。)

いかにも大木の僵れたのが草がくれにその幹をあらわしている、乗ると足駄穿で差支えがない、丸木だけれどもおそろしく太いので、もっともこれを渡り果てるとたちまち流の音が耳に激した、それまでにはよほどの間。

仰いで見ると松の樹はもう影も見えない、十三夜の月はずっと低うなったが、今下りた山の頂に半ばかかって、手が届きそうにあざやかだけれども、高さはおよそ計り知られぬ。