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こうやひじり
高野聖
泉 鏡花
「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页
何でも飛騨一円当時変ったことも珍らしいこともなかったが、ただ取り出でていう不思議はこの医者の娘で、生まれると玉のよう。
母親殿は頬板のふくれた、眦の下った、鼻の低い、俗にさし乳というあの毒々しい左右の胸の房を含んで、どうしてあれほど美しく育ったものだろうという。
昔から物語の本にもある、屋の棟へ白羽の征矢が立つか、さもなければ狩倉の時貴人のお目に留って御殿に召出されるのは、あんなのじゃと噂が高かった。
父親の医者というのは、頬骨のとがった髯の生えた、見得坊で傲慢、その癖でもじゃ、もちろん田舎には刈入の時よく稲の穂が目に入ると、それから煩う、脂目、赤目、流行目が多いから、先生眼病の方は少し遣ったが、内科と来てはからッぺた。外科なんと来た日にゃあ、鬢附へ水を垂らしてひやりと疵につけるくらいなところ。
鰯の天窓も信心から、それでも命数の尽きぬ輩は本復するから、外に竹庵養仙木斎の居ない土地、相応に繁盛した。
殊に娘が十六七、女盛となって来た時分には、薬師様が人助けに先生様の内へ生れてござったというて、信心渇仰の善男善女? 病男病女が我も我もと詰め懸ける。