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こうやひじり

高野聖

泉 鏡花

「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页

青空文庫

それというのが、はじまりはかの嬢様が、それ、馴染の病人には毎日顔を合せるところから愛想の一つも、あなたお手が痛みますかい、どんなでございます、といって手先へ柔かな掌が障ると第一番に次作兄いという若いのの(りょうまちす)が全快、お苦しそうなといって腹をさすってやると水あたりの差込の留まったのがある、初手は若い男ばかりに利いたが、だんだん老人にも及ぼして、後には婦人の病人もこれで復る、復らぬまでも苦痛が薄らぐ、根太の膿を切って出すさえ、錆びた小刀で引裂く医者殿が腕前じゃ、病人は七顛八倒して悲鳴を上げるのが、娘が来て背中へぴったりと胸をあてて肩を押えていると、我慢が出来るといったようなわけであったそうな。

ひとしきりあの藪の前にある枇杷の古木へ熊蜂が来て恐しい大きな巣をかけた。

すると医者の内弟子で薬局、拭掃除もすれば総菜畠の芋も掘る、近い所へは車夫も勤めた、下男兼帯の熊蔵という、その頃二十四五歳、稀塩散に単舎利別を混ぜたのを瓶に盗んで、内が吝嗇じゃから見附かると叱られる、これを股引や袴と一所に戸棚の上に載せておいて、隙さえあればちびりちびり飲んでた男が、庭掃除をするといって、件の蜂の巣を見つけたっけ。