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こうやひじり

高野聖

泉 鏡花

「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页

青空文庫

それでもなかなか捗取らず、七日も経ったので、後に残って附添っていた兄者人が、ちょうど刈入で、この節は手が八本も欲しいほど忙しい、お天気模様も雨のよう、長雨にでもなりますと、山畠にかけがえのない、稲が腐っては、餓死でござりまする、総領の私は、一番の働手、こうしてはおられませぬから、と辞をいって、やれ泣くでねえぞ、としんみり子供にいい聞かせて病人を置いて行った。

後には子供一人、その時が、戸長様の帳面前年紀六ツ、親六十で児が二十なら徴兵はお目こぼしと何を間違えたか届が五年遅うして本当は十一、それでも奥山で育ったから村の言葉も碌には知らぬが、怜悧な生れで聞分があるから、三ツずつあいかわらず鶏卵を吸わせられる汁も、今に療治の時残らず血になって出ることと推量して、べそを掻いても、兄者が泣くなといわしったと、耐えていた心の内。

娘の情で内と一所に膳を並べて食事をさせると、沢庵の切をくわえて隅の方へ引込むいじらしさ。

いよいよ明日が手術という夜は、皆寐静まってから、しくしく蚊のように泣いているのを、手水に起きた娘が見つけてあまり不便さに抱いて寝てやった。

さて治療となると例のごとく娘が背後から抱いていたから、脂汗を流しながら切れものが入るのを、感心にじっと耐えたのに、どこを切違えたか、それから流れ出した血が留まらず