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こうやひじり
高野聖
泉 鏡花
「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页
その後から爪先上り、やがてまた太鼓の胴のような路の上へ体が乗った、それなりにまた下りじゃ。
売薬は先へ下りたが立停ってしきりに四辺をしている様子、執念深く何か巧んだかと、快からず続いたが、さてよく見ると仔細があるわい。
路はここで二条になって、一条はこれからすぐに坂になって上りも急なり、草も両方から生茂ったのが、路傍のその角の処にある、それこそ四抱、そうさな、五抱もあろうという一本の檜の、背後へ蜿って切出したような大巌が二ツ三ツ四ツと並んで、上の方へ層なってその背後へ通じているが、私が見当をつけて、心組んだのはこっちではないので、やっぱり今まで歩いて来たその幅の広いなだらかな方が正しく本道、あと二里足らず行けば山になって、それからが峠になるはず。
と見ると、どうしたことかさ、今いうその檜じゃが、そこらに何もない路を横断って見果のつかぬ田圃の中空へ虹のように突出ている、見事な。根方の処の土が壊れて大鰻を捏ねたような根が幾筋ともなく露れた、その根から一筋の水がさっと落ちて、地の上へ流れるのが、取って進もうとする道の真中に流出してあたりは一面。
田圃が湖にならぬが不思議で、どうどうと瀬になって、前途に一叢の藪が見える、それを境にしておよそ二町ばかりの間まるで川じゃ。