轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ぎょもん

魚紋

吉川 英治

「冨士 臨時増刊号」1936(昭和11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,582 字 · 30 页

青空文庫

もう夏めいた月の冴えであった。

大川は、しいんとしていた。水は、透きとおっていた。

旅すがたをした男女が、永代橋の上に立った。

『だいじょぶかえ、芳さん』

お可久が川をのぞいていうと、薊は、自信のある声でいった。

『おれの生れ在所は、天竜川のふちだ。天竜川からみれやあ、こんな川は、まるで泉水みてえなものだ。泳ぎにかけちゃ、こう見えても、己惚れじゃねえが、夏場よくこの河岸筋で師範している何とか流の先生にも負けはとらねえつもりだが』

『おや? ……。春作だよ』

『何、春作。……春作が何処へ来たって』

『叱っ』

お可久は、男の袂をひいて、知らぬ振を装おいながら、橋の欄干の外へ顔を出していた。

ひょいと、振向くと、成程、喜多川春作が来るのだった。その春作の挙動も、此っ方を憚っているらしく思われる。橋を越えても、頻りと、河岸ぷちを行ったり来たりしている。

薊は、近づいて行った。いきなり声をかけると、非常に驚いた様子で、春作は逃げかけた。跳びかかって、薊は、彼の両手を縛り上げた。

『何しに来やがった。汝なんぞが、野心を起したって、無駄なこった』

『わ、わたしは何も、決して……。