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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 页

青空文庫

で、かれはなおも毅然として、剣山の制度は、家中に無用な迷信心理をつくる禍因だと論じた。

また、蜂須賀家の癌になるだろうともいった。

その上に、ツイ口を辷らして、

「いッそのこと、後に生き残っている甲賀世阿弥も、この際、殺してしまったほうがよかろうと存じます!」

と痛言して、これはちと口が過ぎたと、自分もハッとして絶句し、阿波守や啓之助は、なおさらにびっくりして、その暴言にあきれたような眼をみはった。

――その時だった、折もあろうに。

突然!

ドドドド――ッと、すさまじい地唸りがして、栗尺角の殿中柱が、ミリッといったかと思うと、三人の坐っている畳までが、下からムクムクと震動してきて、座にたえぬような恐怖を感ぜしめた。

「あ! ……」

といって、啓之助は度を失い、三位卿は、

「地震だ!」

と叫んだ。

阿波守は席を立たなかった。脇息とともに仰むけに身をそらし、もの凄い家鳴りにゆれる天井を、白眼で見つめていた。

地震!

かなり大きな地震――と直覚したことは、三人ともに一致していた。

震動は徐々とやんだが、啓之助は、地震ぎらいとみえて、次にくる揺れ返しを案じながら、喉ぼとけを渇かせて、生ける色もなく棒立ちになっている。