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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
吉川英治『鳴門秘帖(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖、鳴門秘帖。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 页
「そして、その弦之丞様は、今、どこにいるのでございましょう」
「エ? 弦之丞様って、そりゃ何だい」
「ア、イイエ……あの、万吉さんのことなので」と、ひとりで言い間違えて、ボッと顔を赧める態を見つめながら、源内は、
「いる所を?」
「はい。教えて下さいませ」
「知らない」
ばかにそッけなく首を振ってしまった。
そして、さらに怪訝そうに、なんだってこの娘が、こうソワソワとするのか、急に居所を知りたがるのか、と不思議にたえない気がした。
腑に落ちないうちは、話さぬほうが無事だと思ったので、後はよい程に話をボカしてしまったので、お米も取りつきようがない。
薬ができると、源内は木枕を取って横になり、お米は礼をいって外へ出た。
だが、かの女は萎えかけた自分の体を、その薬で癒やそうとする希望より強く、今の話が胸の底にいろいろな想像の渦を起こしていた。
万吉と弦之丞とが、一緒になって、この大阪へ来ているということは、お吉の口裏や、いつか、天堂一角が万吉の留守宅を探りに来た時の言葉でも分っている。だから、その万吉に逢いさえすれば、もう、弦之丞の居所を知ったも同じわけである。